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血液疾患の治療について
骨髄異形成症候群の低リスク群(鉄芽球性貧血と不応性貧血)

(1) どのような症状があらわれます

身体がだるい、しんどい、頭痛、運動後の動悸、息切れなどの貧血症状以外に、白血球減少による発熱、血小板減少に伴う出血などが起こり易い。

(2) どうしてこのような病気になるのですか

 原因は不明ですが血液幹細胞の遺伝子に、後天的に異常を生じた為の貧血であり、根本的な異常は骨髄移植しなければ治癒しません。骨髄異形成症候群には鉄芽球性貧血、不応性貧血、芽球増加型不応性貧血の3型があります。主として貧血が問題になるのは、鉄芽球性貧血および不応性貧血です。鉄芽球性貧血は鉄を利用して血色素(ヘモグロビン)を作る系の異常により、血色素(ヘモグロビン)が充分できなくなった状態であり、鉄欠乏性貧血と同じように小球性貧血となります。不応性貧血は血液幹細胞からできてきた細胞(赤芽球)が骨髄の中で壊れ易くなり、赤血球になるまでに次々と壊れていきます。血液幹細胞に異常がありますので赤血球だけでなく、血小板、白血球も出来てくる途中で壊れやすくなり、血小板あるいは白血球も減ることがあります。(2)

(3) どのような検査をするのですか

 血液検査で大球性(平均赤血球容積 100 〜115 fl)貧血,時には正球性貧血(平均赤血球容積 85 〜 100 fl)となります。白血球減少あるいは血小板減少を認めることもあります。骨髄検査をして、血球ができてくる過程での形の異常を顕微鏡で確認し、染色体検査によって、染色体に異常のあることも珍しくありません。

(4) どんな薬を使って治療するのですか

1 骨髄異形成症候群の中で、鉄芽球性貧血および不応性貧血に対しては、免疫抑制療法が行われます。免疫抑制療法として、シクロスポリン+ステロイドホルモンの投与が行われ、ほぼ50%の患者さんに貧血の改善、血小板数の増加が起こります(3)
2 蛋白同化ホルモン(ダナゾール、プリモボランなど)による治療でも効果のあることが報告されています。
3 サリドマイドと類似薬:サリドマイド療法が行われ約40%前後の有効性が報告されています(4)(健康保険では使えず、個人輸入して、治療に用いられています:平成19年3月現在、上ヶ原病院でもご依頼があれば個人輸入して、治療に使います。)。その他に、米国ではレナリドマイド (Lenalidomide)による治療がおこなわれ、骨髄異形成症候群に有効性が報告されていますが米国でも治験中であり、サリドマイド類似薬として厳重に管理されており、個人輸入も出来ません。わが国でいつから使えるようになるかは分かりません。レナリドマイドは骨髄異形成症候群に含まれている5q-の染色体異常を有する患者さんには特効薬と報告されています(5),(6)
4 5-azadeoxycytidine(Decitarabine)(7):この薬はDNAのメチル化を抑える脱メチル化剤であり、骨髄異形成症候群の遺伝子異常を是正し、寛解率・白血病移行率・生活の質(QOL)の改善に有効なことが明らかにされつつあります。(平成19年3月現在、健康保険では使えませんし、個人輸入も出来ません。個人輸入可能になり次第、上ヶ原病院においてもご要望に応じて、治療に利用可能にする予定です。)
5 輸血:貧血には赤血球輸血、血小板減少症には血小板輸血が行われます。但し、赤血球輸血の総計が25単位以上になれば鉄キレート剤であるデスフェラール+生理食塩水(あるいは5%ブドウ糖)を点滴静注して、体内に溜まっている鉄を尿を介して体外に出す治療を併用します。

(5) 類似の他の病気

再生不良性貧血と骨髄異形成症候群とは血球減少が類似しており、骨髄検査で、染色体異常があったり、異常な形をした(異形成)の血球があると骨髄異形成症候群です。しかし、いずれとも診断し難い患者さんがおられることも事実です。過去に、再生不良性貧血と診断された患者さんが数年後に骨髄形成症候群と診断された場合、はじめから骨髄異形成症候群だったのか、途中から骨髄異形成症候群が出てきたのか分りません。

(6) その他

国際予後予測システム(8)では各種の検査成績に基づいて、下記(表2参照)の点数を与え、その点数で予後がある程度予測できると報告しています。この 骨髄異形成症候群の項では、このようなシステムで低リスクと判断された骨髄異形成症候群を対象としました。中間リスク群および高リスク群は白血病の所で述べます。
表2 骨髄異形成症候群の国際予後判定システム
予後因子の配点 0 0.5 1 1.5 2
骨髄での芽球 <5% <5〜10 - 11〜20 21〜30
核型 良好 中間 不良    
血球減少 0/1系統 2/3系統      
 
表3 表2の予後因子の基準
血球減少 核型
好中球減少<1,800 /μl
貧血:Hb<10 g/d
血小板減少<10万/μl
良好:正常、20q-, - Y, 5q-
中間:その他
不良:複雑(3個以上)、7番染色体異常
表4 リスク群
リスク群 点数 50 %生存 白血病移行率(%)
低リスク 0 5.7年 19 %
中間―1 0.5〜1.0 3.5年 30 %
中間―2 1.5〜2.0 1.2年 33 %
高リスク >2.5 0.4年 45 %

但し、この表の50%の生存率は1997年までの資料に基づいたものであり、現在では更に改善されていると思われますがリスク分類、白血病移行率などは今でもほぼ当てはまる資料であります。
参考文献
(2)Jonasova A et al : Cyclosporin A therapy in hypoplastic MDS patients and certain refractory anemia without hypoplastic bone marrow. Br j haematol 1998;100:304-309.
(3)Shimamoto T et al : Cyclosporin A therapy for patients with myelodysplastic syndrome : multicenter pilot studies in Japan. Leukemia Res 2003:110-132.
(4)Bartlett J.B. et al. : The evolution of thalidomide anf its ImiD derivatives as anticancer agents. Nat Rev Cancer, 2004; 4: 314 - 322.
(5)Alan List M.D. et al.: Efficacy of lenalidomide in myelodysplastic syndrome. New Eng J Medicine. 2006 ; 355 : 1456-1465.
(6)AlanList M.D. et al.: Lenalidomide in the myelodysplastic syndrome with chromosome 5q deletion. New Eng J Medicine,2005 ; 352: 549-557.
(7)Issa J.P. et al. : Phase 1 study of low dose prolonged exposure schedules of the hypomethylating agent 5-aza-2’-deoxycytidine (decitarabine) in hematopoietic malignancies. Blood, 2004; 103: 1635 - 1640.
(8)Greenberg P. et al. : International scoring sytem for evaluating prognosis in myelodysplastic syndromes. Blood, 1997; 91: 2079-20
 
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