2016.11.01

「総合防災訓練と防災マニュアル」   西宮市医師会会報 《談話室》 2016年11月号

 医師会の役員室で会議中、居合わせた人の携帯が一斉に鳴りました。「鳥取県で地震発生・・・」1分も経ったでしょうか。ミシミシと部屋が揺れる。久しぶりに体感する震度3の揺れでした。地震より先に警報がきていたにもかかわらず、誰も机の下にもぐろうともしませんでした。最近の携帯は緊急災害速報が否応なしに入ってきます。暴風警報、大雨警報、防潮門扉を閉めたために通行止です、など西宮市の小さい地域の情報が刻々と流され、警戒を呼びかけています。

 阪神淡路大震災を経験して20年余り。この20年間にも日本中いたるところで、(今日もイタリアで・・・)大地震が発生しています。地震を経験するまではこれほどたくさん地震があったとは気づいていませんでした。そして三陸沖、熊本へと救護 支援に医師会が動きました。他地域への救援は県医師会の指揮のもと、西宮市医師会からもJMAT登録医を中心に積極的に手あげいただいています。しかし、地元で発生したら・・・? 阪神淡路大震災の時を思い出してください。今なら行動できますか? 20年前の経験が活かされますか? 経験していない若い世代の先生は? また20年前よりたくさんの在宅患者さんを抱えていらっしゃる先生は? 20年前より歳をとって動きが鈍くなっている先生は?(みんなあの時より20歳も老けましたよ)

 今年も西宮市の一斉防災訓練が行われます。道路、ライフライン、輸送の確保から、救助、搬送、救護所の開設、避難所の開設と、市が行うマニュアルに沿っての訓練です。医師会の参加はトリアージ、救護所、避難所内での診療などで訓練に参加します。医師会看護専門学校の学生さんも避難民、負傷病者として、訓練に参加します。しかし、これは主として市職員の訓練であって、医師会が参加するといっても、代表者だけの訓練になってしまいます。実際どれほど役立つか不安です。ほとんどの会員は訓練が行われていることすらご存知ないのではないでしょうか? 災害時に最も必要とされる医師が(災害時には張り切ってやる気満々の会員が多いのかと思いますが)、自院も被災しながら行政とタイアップして動けるか。まず自院の状態の把握と安否確認から始まって、どこで診療を、救護を、支援をすることができるか。外から来られるボランティア医師やJMATをどのように手配するかなど、課題は山積みです。

 現在救急災害委員会では西宮市医師会として、災害時の行動マニュアルを作成中です。20年間も作っていなかったことを反省しています。自分の所には大きな地震は来ないだろうと片隅で思いながら、今までなかったマニュアルを作りかけたら気が気ではありません。救急委員会の先生方には大変ご苦労をお願いしていますが、今年度中には皆様に見ていただけるマニュアルが出来上がることと期待しています。地震よ、ここに来るのはそれまで待ってくれ〜〜それでもせっかくできたマニュアルは引き出しのこやしになることが理想です。マニュアルがあっても地震は不要。

 携帯の緊急地震速報、無視せず、行動をイマジネートすることも一人一人の防災訓練になるかもしれません。

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