2019.04.08

「元号」                    西宮市医師会会報 《談話室》 2019年4月号

 新元号が「令和」と決まって、日本中が大フィーバー。発表の前から様々な予測が流れたり、発表直後の元号関連商品の発売競争もあったといいます。明治、大正、昭和、平成、令和やっと5つは知っていますが・・・皆さんはどうでしょうか? 国際的なイベントは西暦、歴史の年号覚えは西暦、引き算で年齢がわかりやすいのも西暦。元号なんて旧い、こんなしきたりはもういらないという声もあちこちで聞こえていたのが、「令和」と決まってからはすっかり声を潜めているようです。やっぱり日本人の中に元号というものに親しみを感じ、元号の漢字の意味を探り、それぞれの元号に時代のイメージを映し出す。新しい元号に、未来社会への期待を込めてしまうものなのでしょうか。改元という中に、時代の流れを感じるのは私だけではないと思います。

 さて、医師のイメージ、聴診器を持って患者さんと相対しウンウンと頷きながら会話する。手をとって脈を見る。「あっかんべえ・・して」「あ〜ん とお口開けて」というような医師の形、イメージも時代とともに変わっていっています。コンピューターの入力に忙しく、顔を見てくれない。聴診器当てずに、脈を見ずに、心電図、レントゲン。あっかんべなしに血液検査。このくらいはまあ我慢しても、オンライン診療はどうでしょうか。よほど画像が4K,8Kと良くなっているとしても、音声も聴診器ほどによく拾っているにしても 実際に触ってみれない冷たさ、暖かさ、柔らかさ、弾力性、など、素晴らしいIT技術が進歩しているのでしょうけれど、信用できかねるのは私だけ?いや昭和生まれの医師だけでしょうか。

 医師の働きかた改革の先に、過疎地医療の補いとして、オンライン診療の高度化は必要不可欠かもしれません。忙しいから来院できない〜なら会社の近所で受診していただきましょう。寝たきりだから受診できない〜だから訪問診療があるのです。そんな方達のためのオンライン診療ではないことを、少なくともここ西宮市ではあまり必要性を感じられません。病院、診療所の連携のツールとしてのシステムネットワーク(むこねっと)や認知症初期集中支援チームのネットワーク)は実際に患者さんと対面するために用いるシステムです。難解な手術や、画像診断を遠くの専門医にお手伝いいただくこともこれからのIT医療です。そんな中でもできる限り、患者さんと相対して向き合い、生の声で、生身で診察するという、昭和時代の医師の形が古くさいと言われるのでしょうか。それこそ医師の原点と思うのは昭和の医師だから・・・? 赤ひげのお医者さんは江戸時代だけでなく、現在でも存在します。働き方改革で、そんな赤ひげ精神も崩されようとしています。元号に親しみを感じる日本人ですから、どんなに便利でも合理的でも西暦だけではイメージは作れません。日本人にあった新しい時代の新しい医療のやり方を積み上げ、働き方改革、医師偏在など、医師だけでなく、患者さん側の意識改革も含めて、令和の時代の新しい医療のあり方を考えねばなりません。

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