2021.11.10

「社会的使命にもエサが要る」  兵庫県民間病院協会会報 2021年10月号

 コロナ対策の3本柱は、医療、人流、ワクチン接種といわれています。
 そして、3本目の柱であるワクチン接種は、接種を急ぐあまり、あちこちの地方自治体で接種医師、問診医師の不足を医師リクルート会社などが仲介して、医師の時給の引き上げ競争事態になりました。そんなサイトを覗いて見ると、往復運賃、宿泊費もいれて、2~3日出務したら1ヶ月遊んで暮らせるくらいの高額支給で、時間があったら誰もが行きたいと思うくらいです。そうでなくとも、高額時給のワクチンバイトは希望者多数で早い者勝ちだったとか・・・。定職についていない医師たちの取り合いだったようです。技術不問。マニュアルどおりの問診だけです。

 一方、医療機関での個別接種促進のために診療所では、週100回以上で接種料が2倍に。病院では1日に50回以上で10万円のご褒美をいただけるというのです。もちろん医療機関に対する支援の一環としてありがたく恩恵を被るのですが、なんとなく、餌につられている後ろめたい気がしていたものです。医療機関の使命として、社会的役割として、樹徳会のようなコロナ救急を診ない、重症を診ない病院は当然の役割と考え、個別接種に手あげしていたのです。しかし、倍額が発表された後から参加医療機関が急増し、一部、非接種者の取り合い状態になっていたのも事実です。すっきりしない気分です。

 次に、抗体カクテル療法。当院のように軽症者のみの受け入れ病院では、一番取り組みやすい治療です。でも、入院病床は4床のみではなかなか空かず、外来投与が可能となって9月になってすぐ外来カクテルを開始しました。市内の発熱外来に呼びかけて外来治療のシステムを作り、保健所主導でない、医師会と連携した外来カクテル療法を複数の病院で受け入れることにしました。その話し合いの後で、市医師会長がふと「病院が外来でカクテル療法して何かメリットあるの?」と・・・。病院にとっては、コロナのトリアージ加算があるけれど、外来で国から支給された薬を点滴するだけ。コロナ用のブースを長く使うだけ。その後の24時間のフォローに責任を負うだけ・・・。それなら、入院でした方がお得だ・・・と思ってしまいました。もちろん新しい治療、それも抜群の効果が見える治療をすることに喜びはあります。また、重症化、重症病床の占有率には大いに役立ったと思っています。「お得?」まで考えなかった病院群はうちだけではなかったのです。患者数が多かった9月は毎日のように外来治療、入院期間の短縮化が目に見え、やりがいを感じていました。しかし、9月の最終週頃から急に患者数が減少した後で、何と9月28日になって厚生労働省の通達が出ました。外来カクテル療法の加算が今頃、患者数が激減した後に認められたのです。

 「お得」を考えずにしていた外来カクテル療法に、はじめからに遡って加算処理としていただきたいものです。使命感にもエサがあったら、なお嬉しい。

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