2007.11.01

「民間病院だから民営化への模索」兵庫県私立病院協会会報2007年11月号

民間病院だから民営化への模索

 国鉄がJRへ、電電公社がNTTに、そして、今年は郵便局がJPとそれぞれの反対勢力を押し切って公共性の高い事業団体が順番に民営化、利潤追求をめざす ようになっています。その議論の中では離島や過疎地など効率の悪い地方のサービス低下が切り捨てられないことが重要でした。
さて一方、とある民間病院が患者さんを公園に置き去りにしたという事件。退院可能にもかかわらず、居座りとも言える長期社会的入院、入院費不払い、病院内 での暴言など、そのために大事な職員が退職するまでに至ったといいます。報道以外の事実はわかりませんが、病院にとっては、お客様どころか、我慢していた マイナス要因を手段はさておき、やっとの思いで解決したはずだったに違いありません。病院が非人道的な行動と非難され、病院関係者がカメラの前で平身低 頭。病院のお客様は主として病者、社会的弱者であるので、民間病院でもあらゆるお客様にご満足いただかなくてはならないようです。
とくに救急医療では保険にはいっていない、支払いできない、食い逃げも稀ではありません。救急車できてすぐ、「お金持ってますか?」なんて訊けません。そ れによって医療の内容を変えることもできません。診療拒否はできないし、何よりも、医療者としての良心があります。それらの患者サイドのモラルも問題にさ れず、民間病院が悪者になることはないはずです。
公立と私立。公と民。国鉄、郵便局がそうであったように弱者救済、非効率な部分も含めて対応するのが公でありました。いえ、病院は公でも民でも医療という 事業内容自体が弱者、非効率を避けては通れないものです。ところが、自治体の経済的な理由もあり、最近は公立病院の民営様化が進んでいるように思われま す。民営化されたらサービスが向上するのがねらいのはずでした。過疎地、過疎科(産科、小児科など)の閉鎖は別な要因も大きいのですが、長期入院になりそ うな高齢者の患者が敬遠されたり、非効率な救急医療が縮小されたり、サービスの向上とは逆方向の経営努力がなされているように思えてなりません。経営努力 といって長期入院患者には早期退院、早期転院をせまり、次に受けた病院がその次をみつけられなくて公園に置き去りにしたからといって、受け皿を作る、探す などの公の責任は問われていないようです。
医療は、やはり公益性の高い事業、良心の問われる職業です。公立病院が民間様化していくなか、反対に医療法人の公益性は重要視されつつあります。民間病院の公益性を保った自由な民営化にブレーキがかからないようにしたいものです。

「兵庫県私立病院協会会報」より

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