2007.01.01

「美しい格差社会の日本」兵庫県私立病院協会会報2007年1月号

美しい格差社会の日本

 また新しい年が巡ってきました。医療と介護の改正が大波小波とやってきています。地盤のゆるんだなかで、津波が来た時には耐えられるのでしょうか。  大手都市銀行、証券会社、電鉄会社から製薬会社や薬剤卸会社までも次々と合併を繰り返し、どんどん企業自体の大型化が進んでいます。大規模事業の方が経 営効率がいいのです。地方や僻地医療の空洞化する一方、都会では開業ラッシュで顧客(患者様)を取り合い、大学や大病院は中小病院からも看護師をすくいあ げ、より高い看護基準をもって医療費をさらにのばしていきます。一方慢性期医療、療養系医療、介護の分野にはまた、大手大規模企業の参画もあり、本来の医 療のあるべき姿を変え、医療の分野にも格差が拡がりつつあります。

 基本的な医療から高度医療まで、医療内容の違いは今始まったものではありません。臨床医学の初歩として学ぶベッドサイドの診断学から、各専門科目の最先 端医療までゴールは無く、年々進歩していくものです。そのため基本的な診断学を駆使される最前線のホームドクターから、その情報を得て必要な検査、入院治 療を担当する一般病院とさらに最先端の装置や技術をもって複雑な医療を提供する大学病院などに分化しています。それぞれに役割を担ってうまく連携していま す。しかし すべての患者様に複雑な高度医療が必要なわけではありません。多くのスタッフを集めて至れり尽くせり、高度な医療のみで入院期間を短縮。大型 化する大病院。そういった医療の必要性はどうでしょうか。患者さんの居住地地域の一般病院の需要度は大きいはずです。特に高齢者の増加によって、急性疾患 が長期化する傾向にあります。高齢者にこそたくさんのスタッフが必要であるにもかかわらず、病院の格差化が意図的に作られていきそうな時代です。病病連 携、役割分担というこれまでの美しい格差を壊すことなく地域病院の医療の重要性を知らせ、美しい日本の医療制度の歯車でありたいと思います。

兵庫県私立病院協会会報より

 

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