2009.10.01

専門家集団としての医師会 西宮市医師会会報「談話室」2009年10月号

専門家集団としての医師会

  インフルエンザの季節の前に新型インフルエンザの流行で翻弄されるこの頃です。5月はマスクやタミフルの供給に、9月からは学級閉鎖の基準に、検査の必 要性や有効性に、そして今月はワクチン接種にと話題はつきません。その度に情報の伝達や広報についての不備不足が指摘され不要なエネルギーを使うことにな りかねません。今や情報過剰とまでも言われる時代。インターネットで直接厚生労働省の会議録までもさらにWHOまで誰でもが見にいける時代です。それを適 当に要約したり、解釈したり、意見を述べたりされている情報もあふれるほどです。事実なのか、単なる意見なのかを識別し、がせネタか真実かを判断して行動 することが個人個人に求められています。
 また行政は実行に際して医師会や病院諸団体のような医師集団の流れを利用していきます。報道は大枠の結果だけを即発表し、一般の人をさらには医師までを も混乱させることもあるようです。具体的な内容が決定される前に、正式見解が出される前に話題性があることであれば、報道されているのが現状です。行政か らの指示がでる前に報道情報によってだけ翻弄されては無駄なエネルギーでしかありません。5月のタミフル不足問題にしてもそうでした。充分供給される直前 にパニックが起きそうだったと記憶しています。むしろ患者さん達を落ち着かせることが専門家集団として重要なこと。正しい知識を啓発し不要な心配をさせな いように配慮することが重要と考えます。
 また一方、専門家集団として一般の人たちを担ぎだすこと、これも重要な医師会の役割です。よりよい医療制度を市民と一緒に考える。西宮市医師会医政研究 委員会ではここ3年間毎年、「これでええんか…」シリーズで、リハビリテーションの問題、救急医療問題、そして今年は療養病床、在宅医療の問題について、 市民に現状を理解してもらって少しでも世論の形成をねらっています。厚労相に声が届くのは医師会が早いかも知れませんが、厚労相を動かすことができるのは 医師会よりも国民の世論であるようです。医師会は医師の利益を追求するのみの圧力団体であると思われていた歴史があるからなのでしょうか。そうではなく市 民の健康を守る専門家集団としてインフルエンザだけでなく、医療制度に関しても市民に正しい知識をひろめ、理解を求める活動をしています。
世論の形成はマスコミほど強いものはありません。マスコミの間違った報道は後を絶たず混乱を引き起こしていることは事実です。しかし、産科、小児科、救急 医療の問題や療養病床削減の問題などは医師が声を上げマスコミの報道から世論を動かしつつあるのではないでしょうか。正しい報道がされるよう、専門家とし ての働きかけも必要です。マイナーですが西宮医療連盟ではさくらFMに番組を提供しています。(FM78.7「ドクター教えて」毎週木曜日13時~10分 間)。市民に医師会を身近に感じてもらいたいと思っています。会員の皆様に出演依頼することがあるかと思いますがその時はよろしくお願い致します。
もう一つ専門家集団として西宮市行政へ毎年予算要望を出しています。救急医療について、福祉医療について、公衆衛生、母子保健、学校保健や特定健診等に関 することです。もちろん今年はインフルエンザ対策を重要項目としています。厳しい市財政を少しでも市民の健康確保のために使ってもらいたいがためです。
専門家集団である西宮市医師会ですから、会員個々にも専門家としての責任と自覚を高め、市民のリーダーとしての役割を果たさなければならないと考えます。

西宮市医師会会報 「談話室」 平成21年9月号巻頭文より

 

ページ先頭へ