1999.12.26

病院めぐり1 西宮市医師会会報「談話室」1999年12月号

病院めぐり 第1段

上ヶ原病院は50年以上続いた武庫川病院の歴史を引き継いで1979年6月に開設されました。西宮市街をみわたせる高台に位置する上ヶ原は、戦前 1940年から阪神中央病院、川西航空機付属病院、甲山病院、そして1948年からはクリストロア病院として次々とずっと病院が継承されており、静かな療 養環境の病院として格好の場所であったかと思われます。

しかし、甲陽断層の通り道であった上ヶ原は先の震災によりかなりのダメージを避けられませんでし た。震災後一時休止を余儀なくされましたが、その経験から病院と地域住民との関わりを実感し、1997年5月に再生した上ヶ原病院は地域に開かれた、信頼 される病院をめざして努力邁進しています。震災後は輪番の2次救急を1次救急に変更し、当番日以外でも内科救急患者様は24時間、365日をモットーに対 応できる、こまわりの利く病院としてスタートしました。 外来部門には血液(大江)、リウマチ(波多野)、甲状腺、糖尿病(末廣)、消化器内視鏡(松村:兵庫医大4内科より)、のそれぞれ専門内科医を配置し、一 般内科だけでなく、各専門分野にかけては高度な医療を提供できる自信をもっています。

病院施設のめだまは近隣にはまだないpush-pull 方式の無菌室2室と、個室感覚で粉塵クラス100以下を保つ準無菌室3室です。専門的に血液疾患の治療に主として携わっていますが、自己末梢血幹細胞移植 をはじめ、化学療法感受性の悪性腫瘍には積極的な化学療法をおもいきって行い好成績をおさめています。白血病、悪性リンパ腫をはじめとする血液疾患の臨床 に関しては、兵庫医科大学の血液内科にバックアップを受けながらも肩を並べる勢いで、知識、技術を磨き、西宮市外からも広く患者様を集めています。告知し た患者様に正しい情報を提供し治療法の選択、治療への協力を得ることを旨としています。 入院病室は、6人部屋でもお隣と顔をつきあわせることができるだけ避けられるように、ジグザグ構造となっており個室感覚空間を設けました。放射状にのびる 病棟ウイングの中心にある看護詰め所は、壁のないオープンカウンターとなっていて入院患者様とスタッフが気軽に交流でき、本音を言える環境を作っていま す。 これからの時代に最も必要な老人医療に関しては主として57床の療養型病床が担います。病棟生活の中でのリハビリテーション、音楽療法などもとり入れ、 慢性期の治療を行います。また広々としたリハビリテーション施設は老人を寝たきりさせないためにフル回転しています。併設の老人保健施設、 訪問看護センターに入院患者様がもし移行されることがあるならば、入院中から早い目にコミュニケーションをとるように心がけ、環境、看護スタッフの変化が できるだけ病態におよばないように気を配っています。

ターミナルケアも上ヶ原病院の得意分野の一つです。老人医療の経験、また白血病など血液疾患のターミナル、その他の癌。ホスピスの看板はありませんが、老 いて亡くなるにしても、若くしても、ご本人と残されるご家族にターミナルをいかに受け止めていただけるか、そしてはからずも亡くなった後、悲しくても気持 ちよく見送っていただけたかを追求し反省します。痴呆老人のケアとともに、精神病院であった武庫川病院の伝統のノウハウがここにもいかされていると思って います。 入院が必要な患者様は緊急の場合はいつでもお電話にて医師(夜間、休日は当直医)が対応させていただきます(よほど満床でない限り)。慢性の患者様は月曜 日から土曜日の午前中に、前ぶれ無くても結構です、ご本人またはご家族(なるべくご本人が望ましい)に情報提供書持参で来院くだされば対応いたします。

CTや内視鏡、マルクだけしてくれというご要望にもお応えいたします。そして入院患者様を回診に来られるときにはご一報いただければ、カルテ他資料を準備 いたします。 地域の方々にはもちろん、診療所の先生方にも気軽に使っていただける、気楽な病院でありたいと思います。また 持ち駒で対応できないケースは診療所の先生 方にも、他病院にも、大学にもお世話になることが多いと思います。末永くおつきあいとご指導の程、どうぞよろしくお願いいたします。

上ヶ原病院のロゴマークは体のすみずみまで酸素と喜びを与える赤血球が新しく生まれるところを表しています。私たちの上ヶ原病院は すみずみまでに温かい血の通った医療を提供していきたいと思っています。

西宮市医師会会報「談話室」より

 

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