2016.12.01

「人工頭脳が医療を変える?」     西宮市医師会会報 《談話室》 2016年12月号

 年齢、性別、主訴は、現病歴は、ーx日からお腹が痛い。ーx日から下痢になった。外国旅行は? 食べたものは?発熱・・・血圧・・・脈拍数・・・家族歴・・・飲んでいる薬は・・・アレルギーは・・・これまでに・・・の病気をしたことがある・・・兄弟、両親の病気・・・など、次々と質問に答えていく。コンピューターの求めに応じて、画面に従って備え付けの聴診器を自分で当てる。ではレントゲン、血液検査は〇〇、お腹のエコーをしましょうか、培養をしましょうか。そして、あなたの病気は〇〇、今飲んでいる薬は・・・ではこの度は〇〇の処方をいたしましょう。と、このくらいの問診と診察所見、検査所見から、診断、治療に至るまで、全て人工知能ならあっという間です。一回の受診で治らなければ、もう一度来ていただいて、その間の症状の変化、薬の飲み具合などまた入力。では薬を変えましょう。あなたはもう来なくていいです。と・・・何年か後にはAI を搭載した、ロボットが、顔も、その人好みに変えて、何度同じことを聞いても嫌がらずに何度でも答えてくれる。そんな時代がすぐそばまで来ているような気配です。

 内科医はいちばんになくなるでしょう。テクニックが大切な外科医は3Dのコピー機で作った、臓器の見本。身体中の血管や神経の位置までその患者さんごとにシミュレーションができる。まっすぐに目的の腫瘍に到達し、出血する前に止血しながらの手術で輸血も倹約、術後も軽く、どこまでリンパ節を取らないといけないかということも前もってわかっているので、術後の化学療法は放射線療法は・・・など、AI の指示通り。あなたのガンにはこの薬は効く、効かないはもちろん、的確な治療を選んでくれます。最後まで残るのは精神科くらいでしょうか・・・ロボットに癒される高齢者が多いのでちょっとした精神科患者さんもロボット相手で納得して帰っていただけるかもしれませんよ。

 自動運転の自動車ができたら、お酒を飲んでも代行が不要。タクシーもいらない。認知症ドライバーでも、目的地のセットさえ誰かにしてもらえれば、事故なく、目的地まで到達できるのですね。では予防医療への道はどうでしょうか。家族歴、食生活、嗜好、運動習慣と自分の趣味などをインプットすればあなたにあった運動療法や食事のメニューを考えてくれる。予防接種の時期が近づいたらスマホにお知らせ〜なんては今でもあるのでしょうか。

 日本のAIの技術はめざましく、将棋や囲碁のソフトができ、プロの棋士が負けることもしばしば報じられています。医師の仕事がなくなるのももうすぐそこかもしれません。年間9000人以上の新しい医師が誕生する日本ですが、まだ医師不足と言われています。一体どこを見て医師不足なのかと疑問でなりません。多いに越したことはないかもしれませんが、診断治療はAI任せ、仕事量が減っていき、医師過剰時代もすぐそこに迫っているように思います。正しい医療はAIで、でも患者さんに暖かく接する心はAIに負けたくありませんね。

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