2008.12.01

「クリスマスキャロル」兵庫県民間病院協会会報2008年12月号

クリスマスキャロル

  毎年、この季節になると街ではどこからともなく、クリスマスの音楽が聞こえ人々の心が軽やかに温かくなるのが感じられます。クリスマスはキリスト教のお 祭りですが、いいとこ取りの巧い日本人はお歳暮の習慣と重ねて商戦たけなわとなります。ボーナスが出た後にお財布が少しふくらんで他の人にプレゼントをし たくなるような気分を誘うのでしょうか。今年は最悪の不況で大量の解雇者がでている社会情勢の中そんなことは言ってられないでしょうか。ボーナスを出す方 としてもなかなか厳しい季節でもあるのですが・・・。
 ディッケンズの小説「クリスマスキャロル」は英語の授業で習っただけでしっかり内容を覚えてはいませんが、意地悪な金儲け好きの悪人主人公がクリスマスの晩に怖いお化けに諭され良い人に改心するようなお話だったでしょうか。 クリスマスは寒い季節にもかかわらず人の心を優しく、温かくしてくれるものなのかもしれません。

 さて、幼稚園時代からキリスト教系の教育の中に育った私はクリスマスにはキャロルを歌いキリストの誕生を祝う習慣をもっていました。しかし大学、医師に なり、病院の仕事・・・とそんな余裕なく何年かが過ぎていました。そこへ2003年12月に病院に旧いピアノが復活し毎月コンサートをするようになってか ら、毎年12月のコンサートは職員の合唱団によるクリスマスキャロルをすることになりました。「トップフィールズ合唱団」と合唱団名もあり、病院、老健、 訪問、保育所などの各部署から、職種も看護師、リハビリ、事務、医師・・・と法人のエッセンスを集めたようなメンバーで構成されています。音楽経験者はわ ずか、ど素人ばかり歌好きだけの約15-6人で本格的な混声4部合唱です。始めた頃はプロの音楽家に合唱指導を仰ぎ腕前をあげました。指揮は院長です。は じめは歌に合わせて指揮をすればよかったのですが、だんだん要求が増えもっと大きく、もっとやさしく・・・といいたくなる。素直な職員達は指揮に合わせて 歌ってくれますが、難しい箇所になると指揮は見てくれない。始まりと終わりは大変。曖昧に振るとばらばら、たった15-6人の職員をまとめるだけでもなか なかです。法人内の各職場、職種が、各パートで協力してハーモニーを奏でることにも大いに意義を感じています。病院玄関のロビーにあるピアノの周りに夕方 から集まっての練習です。患者さんが、お見舞いの方が、時には救急隊が何してるのかという顔をして通っていきますが・・・だんだん声がまとまり自分たちで もハーモニーを感じるようになって自己満足。今年も患者さん達が喜んでくださるのを確信して練習に励んでいます。

 クリスマスキャロルはキリストの誕生を祝う賛歌です。キリスト誕生当時、暗かった世の中に明るい光として誕生した救世主キリスト。鬱陶しい病院生活をされている患者さんたちに少しでも明るい時を感じて頂けたらと思いながら キャロルに心を込めます。
 現代の何か行き詰まった世の中、政治も経済も人の心も暗く、どこかに救世主を待ち望んでいたキリスト時代の人々と変わらないかもしれません。

兵庫県民間病院協会会報 2008年12月号より

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